guteki’s blog

愚適庵の日文美術館

 自作の、詩集・小説・随想など、一文をわざと長くしたり、逆に短文にしたり、形式段落を長大にしたり、訳の分からない文体にしたり、
色々に描いたものを展示しています。

2018-01-01から1年間の記事一覧

小説 うろ漏山のイナコ

『うろ漏山のイナコ』 『うろ漏山のイナコ』 第一章 どさ、えぐ。 私自身のことを話させていただく退屈な時間を少々お許しいただくとして、オリエンテーション的な身の上話。これはおそらく戦後のサラリーマン家庭の子供が辿った、一つの典型的な例である。 …

随想 生きて、いる、ことと、死んで、いないこと。

「生きて、いる、ことと、死んで、いないこと」 世紀末と煽(あお)り立ててみたり、新世紀と意気込んでみたり、相変わらずのマスコミの空騒ぎに踊らされて、自分でもついそんな気になってお台場のイベント会場にうかうかと行ってみたり。しかし、ちょっと考…

随想 現代詩の散歩

「現代詩の散歩 ーー 西脇順三郎の詩における 円環イメージを辿ってーー 」 ☆はじめに 現代の詩人で好きな人はいますか。あるいは、現代詩 人を誰か知っていますか。そう聞かれて、はい、金子み すゞさんが好きです、とか田村隆一という詩人だったら よく知…

ト二・ギーコ氏の妄想

『ト二・ギーコ氏の妄想 ー莫迦なシ"ップンのタワシー』 この世の光の中とやらに現れ出た(人は判る世界を光で表し、明るい世界は目に見えるから、判らない世界を闇で表す。何故なら暗闇では何も見えず何も認識できないから)、つまりこの世に生まれた出たの…

トニ・ギーコ氏の地球旅行

『トニ・ギーコ氏の世界旅行』 一 旅立ち 二 香港 『トニ・ギーコ氏の世界旅行』 一 旅立ち トニ・ギーコ氏は懶(なまけもの)である。縦の物を横にもしない。いや、この言い方に倣(なら)ってより正確に言えば、横の物を横にもしないほどの無精、横着者で…

詩集 日蝕の月光

『日蝕の月光』 序 「帰混沌」 「還差別」 「淫淫」 「途中下車」 「コスモス」 「ほのあかるい廊下」 「影(シャドウ)」 「殺戮」 「インフルーエンザ」 「遷化」 「邂逅」 『日蝕の月光』 序 「遂に新しき詩歌の時は来たりぬ」と、青年らしい頬を紅玉リン…

詩集 無意味な風景

『無意味な風景』 「奇跡」 「酒場の椅子」 「バイバイ」 「無意味な風景」 「通勤電車」 「鶏小屋」 「ギブ・みー・チョコレート」 「福祉的な光景」 「ガラン ドー」 「喫茶」 「花瓶」 「むい」 「みえない」 「バーバリ」 「弁当」 「落日」 「不在」 「…

詩集 こくいー

序 禅の公案を素材に、それに引き摺られながら蜘蛛が吐き出す糸のように文字にしたもの。固より禅とは直接の関わりはなく、現代詩の仙人と称せられた西脇順三郎が禅問答に超現実的な面白みを感じて詩に通じている所がある、とどこかで書いていたのを真に受け…

詩集 はかもは

「あのおー、エットォー」 「ンコ坐り」 「坐り込み」 「リュックサック」 「山姥ギャル」 「汚ギャル」 「ズータドータ」 「けーたいー」 「じーんず」 「いやホーン」 「ボーシ」 「わかるまで、帰しません。」 ーー今時の塾の釣書ーー 「持ち込み」 「お…

小説 近代詩の消長

『近代詩の消長』 序章 出会い ナラ公園の縁(へり)の、割と深い側溝の縁(ふち)にしゃがんで。危ない!今にも頭から落ち込んでしまいそう……。そんな具合で中を覗いている白髪頭の爺さんがおった。「じいさん、大丈夫けー、危ないがな」と走り寄ると、「心配す…

随想 心のこころ

随想 心のこころ 一 自明の心・不明のこころ 人は皆、誰もが心を持っている。それは自明である。「心無い」と言われる人も「人で無し」という「心」を持っている。この心の存在は、科学的に証明できない。物質的には、心は存在しないとされる。だが、人は誰…

小説 思弁とエポケー

『思弁とエポケー』 イントロダクション 人間の認識機能は、一般に「理性」と「感性」の両輪によって成り立っていると言われる。これに数学者の岡潔は「信解(しんげ)」という認識機能を最上のものとして付け加えた。前二者に倣って言えば「信性」と言うこ…